─────────────────────────────────
【なるほどコラム】腰部脊柱管狭窄症
たまには整形外科らしいお話をしましょう。「腰部脊柱管狭窄症」は、
読んで字の如く、腰の神経が走っている部位が狭くなり、神経が圧迫され
ることにより発症する病気です。
この狭窄の原因は、いろいろありますが。ひとつの原因から起こるので
はなく、多数の原因が複合して起こる病気、と考えた方がよさそうです。
代表的な原因としては、加齢によって起こる骨棘(こつきょく:骨に出
来るトゲのような出っ張り)や、靱帯の肥厚(ひこう:厚く堅くなること)
等です。これらによって、神経が圧迫されるのです。
症状は、圧迫される部位により異なり、馬尾型(ばびがた)、神経根型
(しんけいこんがた)、混合型に分類されます。
馬尾型では、下肢や臀部・陰部の異常知覚、膀胱・直腸障害を特徴とし、
神経根型は下肢や臀部の疼痛を特徴とします。混合型は両者の合併、もし
くは混在した症状です。
膀胱・直腸障害とは、尿意・便意の消失や障害のことで、これがあると、
積極的な手術適応になります。おしっこのたまる感じや、出る感じがわか
らなくなったら、大変ですよね。
そして全ての型に共通する、最も特徴的な症状は、間欠性跛行(かんけ
つせいはこう)です。これは、しばらく歩行するうち、腰痛や下肢の疼痛
やしびれ感が出現し、歩けなくなるのですが、しばらく休憩するとまた歩
けるようになる、という症状です。
診察していて難しいのが、同様の症状が別の病気でも起こる、というこ
とです。「閉塞性(へいそくせい)動脈硬化症」、という病気です。簡単
に言うと、足の血管が細くなってつまる病気です。
同じことが頭に起きると脳梗塞、心臓に起きると心筋梗塞になります。
通常は鑑別可能ですが、ご高齢の方の場合、両方合併していることがあ
り、どっちもあるけど、どっちが主か、と悩みます。まあ、両方いっしょ
に治療してしまいますけど。
話を脊柱管狭窄症に戻します。次は検査です。単純X線、CT、MRI等です。
責任病巣(ここが狭いのがいけないんじゃ~、という場所)の決定とどれ
くらい狭いのか、という評価です。
診断に難渋する場合や、術前などでは、脊髄の造影検査(脊髄に造影剤を
注入して、X線透視装置で見ます。針を刺すので、当然、痛いです)、神経
根造影(背骨から、神経が出てくる部位の造影で、通常、麻酔薬も一緒に
注入するので、これで症状がよくなれば、責任病巣の確認と治療が一緒に
出来ます)等も行われます。
いよいよ治療です。患者さんはご高齢の方が多いので、保存的治療が中
心です。痛み止めの服用や湿布の塗布、理学療法等です。理学療法は牽引
や、低周波、マッサージベッド等、いろいろなものがあります。当院では
鍼灸が好評です。
硬膜外ブロックや神経根ブロックが著効する場合があります。ただ前か
がみになって歩く、というだけでも効果があります。
手術を行う上記のように、膀胱・直腸障害がある場合や、保存的治療で
十分な効果が得られないときです。狭い部分を広くする、開窓術や椎弓切
除術が中心となります。
数年前から、プロスタグランジン製剤が奏功する、という文献をちらほ
ら目にします。高価な薬ですが、あんまり効果があるようには感じません
ねえ。高価、と言っても、多くの方が服用されているサプリメント・健康
食品よりは安いのですが。
==================================================================
2005(c)Kawakami Surgery and Orthopedics Clinic.
|